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絶妙すぎる”型破り”のバランス感覚!ドラマ「ちかえもん」最終回感想


ついに最終回を迎えてしまったNHK木曜時代劇「ちかえもん」。

江戸時代の大阪が舞台。主人公が人形浄瑠璃作家の近松門左衛門。

ってことで、マジメな物語かと思いきや、なんともオフザケ満載な時代劇に第1話から笑いの連続。すっかりハマってしまいました。

近年まれに見る傑作ドラマだっただけに来週からサビシイ!

そんなサビシサを少しでも紛らわせるべく、最終話の感想を交えながら、ちかえもんを振り返ってみます。

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絶妙すぎる「型破り」のバランス感覚

これまでの時代劇ではおよそ考えられなかったオフザケの数々が「ちかえもん」最大の魅力。

たとえば…

  • なんともいえず耳に残る1970年代頃の歌謡曲(替え歌)の数々!
  • 「プライド」「プレッシャー」などのカタカナ語を平然としゃべる江戸町人!
  • ヘタウマな再現アニメの中になぜか現代の家電とか通天閣があるよ!
  • チープ感ただよう赤穂義士再現ドラマ!

 

などなど、一歩間違えたら水と油のようにまったく相容れずに滑ってしまう危険と隣り合わせ。

なのにすべてが噛み合っている。

出会うたびに「ハッ!」と画面にクギ付けになる要素ばかりでしたが、冷静に考えるとよくもまぁこんな冒険をできたもんだと感心しきりですよ。

“型破り”も絶妙なバランス感覚あってこそ。制作スタッフの見事なセンスに乾杯。

テンポの良さ、最終回のスピード感たるや

笑えるシーンは思い切りふざけて、シリアスなシーンは思わず息を呑むのが「ちかえもん」。

このメリハリ感に加えて、サクサク進むテンポの良さ。

特に最終回冒頭のスピード感には圧倒されました。

開始3分でもうあんな結末を迎えていた。流れるようにコトが進む。なんという速さ。今までずっと「いっこも書けてへーん」だったスランプ作家の筆もサラサラ進む進む。しばらくキツネにつままれた状態でしたが、これもまた”型破り”か。

(筆といえば、オープニングで筆からポタポタ墨が落ちてるのに、手が微動だにしないのが死人っぽくていつも怖かったです。)

みんなが幸せな結末

「今日のこの日ィのためにワイは不孝糖売り万吉になったんや!」

万吉の最終回のセリフ、「ちかえもんが大傑作を生み出す手伝いをするために生まれた」とも置き換えられそうですが、万吉の正体がまさかアレだったとは。そこが予想できなかった自分がちょっと悔しかったですね。

子供のように純真無垢すぎる万吉の性格はすぐ受け入れられましたが、文字を読めるのはちょっと不思議だなと感じていました。それも、ある種の”妖精”的なポジションということならすべてが腑に落ちます。

万吉が近松の危機にタイミング良く駆けつけられたのも、近松母にすぐ気に入られたのも、都合良くサバを手に入れられたのも、魔法的な部分があったんでしょう。

サバといえば、ある登場人物が最後にサバ漁師になる結末を迎えるわけですが、ここで「氷の下のサバを捕って親孝行」の近松母が語った昔話を思い出しました。

親孝行の象徴のサバを、親不孝者だったあの人が捕る。このハッピーエンドはなかなか深い。

義太夫かなり活躍

どの役者さんもハマリ役、本当に見事でした。

底抜けに活き活きとした芝居を見せた万吉(青木崇高)をはじめ、関西出身の役者さんが多いおかげで大阪弁も安心して見られました。

が、なんと主要キャラである近松門左衛門(松尾スズキ)&竹本義太夫(北村有起哉)のお二人は関東ご出身。なのに大阪弁に違和感が無い!

※松尾スズキさんは関東ではなく北九州市のご出身でした。訂正しお詫びいたします。

同じ大阪が舞台の朝ドラ「あさが来た」もそんな状況で(ヒロインが関東出身)、方言指導が良いのもあるんでしょうけど、不慣れな大阪弁を見事にこなす役者さんたちが本当に素晴らしい。ツッコミもネイティブ並みにバッチリじゃないですか。

竹本義太夫役の北村有起哉さんはさらに浄瑠璃の語りもゼロからの習得。なのにあれだけの見事な語り。義太夫些少活躍どころじゃなく、中の人はもうかなり大活躍ですよ!

痛快娯楽時代劇という新ジャンルをアンコール!

朝ドラ「ちりとてちん」にハマって以来、脚本家の藤本有紀さんの名前を見るたびにチェックしてきましたが、ようやく「ちりとてちん」に匹敵するドラマが出てきてすごく嬉しいです。

それも可愛らしい女の子が主役のドラマではなく、まさか五十歳のオッサンが主役のドラマだったとはね!(オッサン、可愛いらしかったけども!)

「ちかえもん」の曽根崎心中エピソードが完成されすぎていて、続編の可能性は薄そうではありますが、せっかく生まれた「痛快娯楽時代劇」という新しいジャンルがこのまま埋もれてしまうのはもったいない。

あの歌、あのアニメ、あの可愛げのあるオッサン。

「ちかえもん」で生まれた型破りな時代劇を、全く別の作品でも良いから心の底からアンコール!

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コメント

  1. 京太郎 より:

    私の中では もう今年…ぃゃ、近年でナンバーワンのドラマでしたわぁぁぁ。
    ほんまに「絶妙」という言葉がぴったりな。
    替え歌は 私ら世代にどんぴしゃやし。
    あのゆるすぎるアニメーションも…
    もちろん話の展開や セット、小道具、お衣装…役者さんも かちっとはまりましたなぁぁぁ。

    私、万吉っつぁんは 「実はあの日助けていただいたタヌキ」と言い出すのではないかと ちょびっと期待していたのですが。
    ぃゃ、タヌキは先だって 番頭さんでやったから キツネ? 鶴???…と思うていたら、そうきたかぁでしたし(笑)

    草々さんも すごい役者さんになりましたなぁ。
    「龍馬伝」のときも あらら、うまくなって…と思ったけど、さらに、こんな役もできはるんやぁと感心しました。

    あぁ、一挙再放送、希望します。

    • ひらら より:

      ▼京太郎さん
      ちかえもん、本当に面白かったですね~。
      オヤジが大活躍するドラマとしては行列48時間に並ぶ傑作だと思ってます(笑)

      タヌキ・キツネネタも時代ものとしてはありそうですもんね。
      あの人形を見抜けなかったのは悔しい、、、
      というか、越前からどうやって大阪までやってきたのかしら。

      草々さんも見事なハマリっぷり、
      コワモテ役がメインだと思いこんでいたので、
      あんなに無邪気な役をこなせるのは意外でした。
      いや、意外と考えるスキも無いほど「こういう人いそう!」と
      すんなり受け入れられていました。

      まだHDDに残ってる私は折を見てチラチラ再生します(笑)

  2. ぼよよん より:

    > なんと主要キャラである近松門左衛門(松尾スズキ)&竹本義太夫(北村有起哉)のお二人は関東ご出身。なのに大阪弁に違和感が無い!

     松尾スズキさんは北九州市の出身ですよ (演劇に取り組み始めた大学までは福岡県内)。その後の演劇がらみの人としての本拠地は首都圏なので, そういう人は関西の方から見たら「関東ご出身」なのかもしれませんが…。

    • ひらら より:

      ▼ぼよよんさん
      北九州市ご出身でしたか!
      当方の調べ間違い、大変失礼しました。後ほど修正しておきます。
      北九州でも関西とは随分イントネーションが違うので、
      やはりあれだけ違和感の無い関西弁で演技されたのは素晴らしいですね。

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